風土 ― 十一面観音立像 & 再興湖東焼

hirunesai2015-09-05

いつも通りの始発に乗る

長浜にて三度目の乗り換え

車中より眺める湖国の空は

幾分秋の色を帯びて清々しい


11時半前滋賀県高月駅に到着し

整備された観音の道を歩く

澄んだ水の中を小魚が駆け巡る

緩やかなカーブを過ぎると渡岸寺観音堂に


境内は明るく広々としていて

古木の緑とやさしい空気に満ち満ちている

拝観料300円を納めて収蔵庫へ


引き戸を開けて中へ入る

そのお姿を見た途端、呆然とし暫し立ち尽くす

美しい

この様な美しい仏様は今迄に拝見したことがない

写真などからは想像もつかぬ気品に満ちた色香

その奥にある、ある種の野蛮な生々しさ

くちづけられているかに見える表情

ふくよかな肉付きと美しいくびれ

静かでありながら躍動を感じるお背中

張りのある腹部

蓮の台座からさえ気品が立ち上るように感じられる

時を超越した閑かな舞

舞の瞬間を写したお姿ではなく

その舞の全てを写されたお姿


本当に美しく、ただ眺めるばかり

白洲正子さんが補陀落山思想について書かれた中に

観世音菩薩は、熊野灘に誕生した、いわば日本のヴィーナスであった

と、書かれているが当にヴィーナス


収蔵庫を出て、絵葉書セットを購入し

駅へ戻るすがら、水路を飛ぶ蜻蛉、蛙や草木を眺め

ここに住まわれる人達を大変に羨ましく思う

また、この美しい風土を守り伝えていかれるのに

いったいどれほどの努力をされているのであろうかと考える

きっとこの土地の風土とこの土地の人々が守り伝えてきた心が

あの観音様を更に美しいお姿にしたのだろう


高月駅にて 渡岸寺観音堂 向源寺 という本を購入。1500円也

観音様のお写真がいっぱいの本

本を買った後、電車に乗り次の目的地の彦根を目指す


後 5分で彦根やな、とアラームを止める










( ゚д゚)

はっ ! ここ何駅だ ?

・・・・能登川・・・

orz   乗り過ごした・・・

慌てて電車を飛び降りて、逆方向 ( 彦根方面ね ) の電車の時間を確認

それから予約先に直ぐにTEL・・・

「すみません、30分程遅れます・・・」


予定より25分遅れで彦根

20分程歩いて夢京橋キャッスルロード傍にある

再興湖東焼 一志郎窯さんへ


予約していた旨を告げて奥へと案内して頂く

はい、お察しの通り、陶芸体験です

体験は2000円 ( 作品の大きさによっては割増しのときもあり ) + 送料

土は彦根の土に少し信楽の土を混ぜたもの ( だったと思う )

彦根の土は鉄分が多めなのだそうです

普通に作り易い土でしたよ

問題なのはオイラの腕前の方  笑


本日ご指導下さるのは Iさん

Iさんはセラミック科で学ばれ、現在は一志郎窯さんのお弟子さん

絵付けなどの作品製作の職人仕事全般から接客、体験までこなし

そればかりではなく、高校で絵付けの指導もされておられ

またお茶の盛んな所でもあるので、お茶の勉強などもされているのだとか

接客の間々に絵付けでは、集中してできないのでは・・・と

こちらが余計な心配をしてしまい、忙しくって大変なのでは・・と尋ねると

好きなことなので と普通に答えられる

他人からは苦労に見えていても、本人には然程の苦労でもない

というのもあるだろうし、根が真面目な方というのもあるのだろう


こちらの Iさん、神話や昔話、城下町伝説、寺院などがお好きで

将来は尼さんに・・・いや冗談  笑

殊に滋賀県絡みのものとなると一段と目を輝かせる

体験後に石山秋月の赤絵のぐい呑みを頂いた折

青鬼祭について嬉しそうに教えて下さったり

あるいは、こちらが蝉丸の名が思い出せなくてまごついていると

直ぐに、あー蝉丸かあ ! と言い

坊主めくりの折の蝉丸について楽しそうに話される

( 聞いている時によく意味が分からなかったので今調べたけど

 蝉丸ルール = ローカルルールの話だった。 すみません、勉強不足で

 よく考えると滋賀育ちの人とある程度の話をするのは初めてだな)

それから、山などもお好きで

夏などは、気が付いたら山にいることがある、と楽しそうに話される

山にいるといっても車などで登るのではなく

御自身の脚で登られるというのだから、こちらは驚いてしまう

伊吹山や比叡のお山にも登られるそうだ


他にも余呉湖の美しさや琵琶湖で泳げる所

鮒寿司の事からはたまたブラックバスを出してくれる居酒屋の事など

歴史文化から身近な生活の事まで、とても ‘ 滋賀県 ’ がお好きらしい

因みにブラックバスを食べる理由も、彼女曰く

琵琶湖から頂いたものは総べて頂く ! だそうです


陶芸の道を選ばれた理由はお聞きしなかったのだけど

上記の様に、歴史や文化が好きなことと

溢れんばかりの郷土愛から自然と選ばれたのでしょう


この様にアクティブな方なので

あちこちと出掛けたい所があるらしいのですが

仕事柄まとまった休みが取れない

まず先生がまとまった休みを取ってくれないと

弟子はまとまった休みが取れない ! と冗談半分、本気半分に仰られる


お話を伺っている限りでは、師匠の中川一志郎先生とは

どこか親子のような間柄の様で、先日も左党で砂糖な中川先生を

ケーキヴァイキングに連れて行って ‘ あげた ’ そうです

片や、先生の方も先生の方で、今日は調子が悪く、普段ならもっと

( ケーキを ) 食べられたのに と Iさんの少々生意気な口振りや態度も

まったく意に介しておられぬ御様子


中川先生は薪窯の窯焚きが間近な為

本日はこちらの方にはいらっしゃらない とのことで

お会いする機会には恵まれませんでしたが

Iさんの様な若い真面目なお弟子さんが師と仰いで付いて行かれるのは

中川先生の器量とお人柄のものでありましょう


さてさて体験の方ですが、本日も

抹茶茶碗 ! という名のフリーカップを作らさせて頂きました  笑

釉は夜の琵琶湖をイメージした濃く深い青に白の掛かったもの

体験で選べる釉は全部で10種類くらいやったかな

焼き上がりが楽しみです !


元来日本では、風土が人を育て、人が人を育て

物や道具が人を育ててきた

滋賀の風土に育てられ、滋賀の風土や歴史を愛する Iさんの様な女性が

再興湖東焼の流れを継いでいかれることは

本当に喜ばしく、頼もしいことだと思います

出来うるのなら、本来の意味での初心

― 素材や物事に対しての新鮮な気持ち、初々しさ ―

を常に持ち続け


一志郎窯さん、Iさんありがとうございました