「 沼田の夕焼けを見るのも久し振り 」

真田太平記 第十二回

沼田城主信幸  より

渡瀬恒彦さん演じる真田信幸と

加藤嘉さん演じる矢沢薩摩守頼綱との遣り取り

 

本家から分家の信幸に

秀吉から本家に届いた朝鮮出兵の書状について

その内容を知らせに来た矢沢薩摩守頼綱

書状の内容を伝え終えた後で

ただ、このことは ( 本家より先に )

「 江戸から此方へ知らせがあったことと存じましたが 」

と、信幸に問う

「 いえ、知りません 」

咄嗟に嘘をついてしまう信幸

頼綱は

「 左様で・・・」

 

立ち上がり、外を眺めた後に信幸が

「 今宵は久し振りに酒など如何で御座る 」

「 のう、大叔父殿 」

穏かで厳しくあたたかで、そして寂しげな笑みを浮かべる

頼綱

「 伊豆殿・・・・お座り下され 」

頼綱に言われ従う信幸

幼少の頃よりこの大叔父に、武芸は元より

様々のことを厳しくあたたかく教え導かれて来た信幸は

どこかこれから叱られでもする子供の様だ

その信幸に本家と分家のあり様

分家の当主としての心構えを

延いては分家も本家もない

当主としての心構えを述べる頼綱

 

「 分家とは申せあなた様は、御当主で御座る

 当主たる者はどこまでも、我一念を貫き通さねばなりません

 某、その様にあなた様をお育てして参ったつもりで御座る 」

 

「 若しも、本家分家の争いが戦になりました時は

 某、あなた様に槍を突き付けることになりまする

 そのお覚悟にて兵を養い、領国を治めねばなりませんぞ 」

 

厳しい言葉で教え諭す頼綱

その厳しい言葉には

今は分家の当主であるが

幼き頃より教え導きそして何よりかわいがって来た

自分と同じ血の流るる甥 昌幸の子である信幸への

やさしい愛情が溢れ、真情が込められている

 

「 沼田の夕焼けを見るのも久し振り 」

 

 

この場面の加藤嘉さんの演技は

大変に素晴らしかったです