成井恒雄・井藤昌志 2人展

hirunesai2016-02-06

ずらっと居並ぶ数十個のお茶碗に

圧倒される

これらのお茶碗を作られた

作家さんがお亡くなりになられてから

もう直 4年のはずである

全国的には決して有名な作家さんではないものの

地元の益子では名の通った御方で、関東には今でも

その作風、お人柄を贔屓にされている方も少なくないと聞く

現に今回、牛窓の御茶屋跡で開かれているこの展示

― 成井恒雄・井藤昌志 2人展 ― にも

東京から何人かが足を運ばれておられるとのことであるし

会場にあるお湯飲みは10点にも満たず

お目当てだったぐい呑みに至っては 2つしかないのに、である


お亡くなりになられてから3、4年も経ていれば

お目当てのぐい呑みなども良いものは残ってはいまい

本当に冷やかしの心算で伺ったのであるが

成井さんのお茶碗の見込みの大らかさ、穏かさ、温かみに

忽ちに惹き込まれ、夢中になってしまった

美しい釉を見ている内、半泥子先生のお名前が頭の中を過ぎる


今回の 2人展はもう御一方の井藤さんが

成井さんのお茶碗をとてもお好きでいらして

その井藤さんの力強い仲立ちで実現させて頂きました、と

こちらの御茶屋跡の末藤さんが傍のお茶碗を

まるで愛おしい我が子を抱いているように、大事に両手に抱きながら

説明をして下さる

賃引き仕事を終え、一日の最後にお茶碗を挽いておられたそうで

そして、これらのお茶碗は成井さんの生前には売りに出されることも

ほとんどなかったそうです、と


今回の展示をネットで知る迄、成井さんのお名前も存じ上げなかった

少し調べてみると、とても無欲な方だった、と

家族も多く、職人も抱えておられたが

作るものがさもしくなる、との理由からそういったものから

身を遠ざけておられた


築120年の御茶屋跡、鄙びた港町の空気、冬のやわらかな日射し

その中で二時間近くもの間、ゆっくりひとつひとつ拝見させて頂く

どのお茶碗も土、形、手取りの重さ、釉の調子、掛け方、と

一つとして同じものはない

そしてひとつひとつ違いながらも、使う人への心配りは変わらない


少し小振りな青磁のお茶碗を頂く

全体的にはグレーだが、その中に

透き通ったブルーがきらきらと煌き

ほんの少しだけ打たれた化粧土が微かに異国の風を感じさせる

胴の太めの二筋の箆目がフォルムに力を与え

融けた鉄粉、土に混ざる小さな石が釉の調べに変化を加え、また調える

細やかな貫入がとても美しい


成井さんは作品を作られる折

無理を通さず出来たなりに、と作られておられたそうである

それは、成井さんが益子の土や釉薬を、そして益子の焼き物を

どれ程に大切に想われておられたかの証であろう


御茶屋跡さんありがとうございました