桜の葉に宿る

2006年の1月

銀座に行った

渡部誠一先生の個展「漆芸の風狂 渡部誠一近景」

会場に入って一番最初に目にしたのは

他のお客さんの応対をされている先生のお姿だった

お客さんの方に真っ直ぐに向かれ、お話をされながら

両の拳を、ぐっ、 ぐっ、 ぐっ

と、一定のリズムで力強く握りしめられている


作品を拝見する

どれも素晴らしい、どれも凄い


桜の葉の水滴に目を遣った瞬間

サッ、と何かが流れ去った

その桜の葉っぱの表面か、あるいはその中かは分からぬけども

兎に角何かが流れ去った

桜の葉の四季だ !

即座にそう感じていた

この葉っぱには桜の四季が宿っている !


人の形をしたものや動物の形をしたものに

魂が宿っているのではないか

生きているのではないか

と感じることはしばしばだが

植物の形をしたものに、そのものの四季を感じさせて頂いたのは

後にも先にもこの時だけの事だ


人間の作るものなど、自然のものには遠く及ばない

と、仰られていた渡部先生

まだまだ作りたい と、思われているのだろうか

それとも、自然のなかに戻られることを嬉しく思われているのだろうか


心より御冥福をお祈り致します